[ドゥームズデイ・ブック] コニー・ウィリス/著 大森望/訳


最近、彼が買ってきて、家に置いてあった。
分厚い文庫本の上下巻2冊揃。
[読破]というに相応しい読後感。


はたしてこれはハッピーエンドなのだろうか。それとも、完全な悲劇。


起こってしまったことは、取り返しがつかないし、見過ごした瞬間は、一生見過ごしたまま。
たとえ、ある人間が、異なる次元に同時に存在しているのだとしても、それぞれの時間はやはり一度きり。
ある瞬間を、完全にやり直すことはできない。
 (人生はかなりの程度、やり直しのきくものだと私は思っているが。)
20代も後半に差し掛かった私にはわかりきっていることなのだが、キヴリンのパートを読み進む間、常に感じた。


舞台(の半分)は中世のイギリスの、クリスマス前〜1月の半ばまで。
1月に訪れた東欧のイメージで、情景が目に見え耳に聞こえるようだった。
絶望的な寒さ、森の深さ、石の床の冷たさ、鐘の音。 灰色の空。黒い森。
しばしば登場する、[鐘]の音が無性に聞きたくなった。


 −−−


彼が好む小説といえば、構成は難解で、意図的に小難しい言葉遣いをしているものだと、勝手にイメージしていた。
(悪いけど。)


だから、ただ単に「どんな感じの話なのかな」と、パラパラ見てみるだけのつもりだったのだけど・・・
(私自身、本を手に取ったら、パラパラ、なんて読み方が出来ないたちであることはわかっていたのだけど)


まず意外だったのは表紙の絵柄。(カバーをかけていたので、かなり読み進んでから見た)
少年向けのようなかわいらしいイラストレーション。
内容は、なにも難しい事はなく、構成もシンプルで言葉遣いもごく普通。
ストーリー自体も、日常的な感じで進む。(そのような雰囲気で読ませる文章だったのだろう。)
とくに後半(下巻)は、淡々と言ってもいいような感じで進む。
ハードなSFでもないし、難解なミステリーでもない。意外だった。
そういえば彼は、[世界名作劇場]が大好きで、たくさんDVDを持っているんだっけ。
素直にいいお話に涙する人だったんだ。


[航路]も読んでみようかな。